記録ビデオ撮影とスナップ写真撮影に共通する、人物を撮るときのポイントをまとめました。
適切なサイズで撮る
人物は引きすぎず寄り過ぎず、適切なサイズで撮ることが大事です。
例えば「しゃべる人物」を撮るとき、フルショットでは引きすぎです。これはなぜかというと、しゃべるという動作に下半身は関係ないからです。
では顔のアップがいいかというと、それでは寄り過ぎです。 なぜなら、しゃべる動作には身振り手振りがつきものですが、顔のアップではそれが写らないからです。
ですから、「しゃべる人物」を撮るときは、バストショットが基本になります。
これと同じように考えれば、人物を撮るときの適切なサイズは自ずと決まります。例えば「踊る人物」なら、伸ばした手足までフレームに入れ、「化粧する人物」なら、しっかり顔をアップにするのが基本です。
ただし、被写体が周りの人物や状況と絡んでいる場合は、その「関係」をフレームに入れたショットも撮っておくのがいいと思います。
近づいて撮る
最近のビデオカメラには、強力な手ブレ補正機能が付いていますが、もちろんまったくブレないというわけではありません。
望遠にするほど手ブレは大きく画面に反映されますので、手持ち撮影の場合は特に、ズームレンズをワイド端にして、被写体に近づいたほうが見やすく撮影できます。
これは音声の録音にもメリットがあります。被写体に近づいたほうがカメラマイクも近くなるので、声がハッキリ録音できます。
スナップ写真も、被写体に近づいて撮ったほうが、臨場感が生まれます。
ただ、動画・写真どちらにもいえますが、カメラが近くなると当然、被写体は撮影されていることを強く意識します。そしてその意識は、表情や仕草など、いろいろな形でカメラに写ります。
もし被写体が子どもでカメラマンがその親ならば、それは「いいこと」である場合も多いでしょう。子どもの笑顔が増えたり、身振りがダイナミックになったりして、よい画が撮れるかもしれません。
しかし、どこかの知らない大人がカメラマンだとそうはいきません。小さな子だと、怖くて泣き出してしまうかもしれません。そうなってしまっては、撮影どころではありません。
カメラマンと被写体の距離は、そのまま人間関係の距離です。被写体に近づいて撮るということは、日常生活で他人に近づくことと同じか、それ以上にセンシティブな行為です。
その事を常に忘れず、どのくらい近づけるか、どのタイミングで近づけるかを、瞬時にしっかり見極める必要があります。
目の高さで撮る
人物はその目の高さにカメラを構えて撮るのが基本です。
ローアングルやハイアングルで撮影するとニュアンスが生じます。もちろんそれを狙ってやるのならいいのですが、ただ記録する場合は、意味なく角度をつけるべきではありません。
座っている人や子どもを目の高さで撮るときは、自分も姿勢を低くする必要があります。ときには、無理のある姿勢をキープしなければならないこともありますが、そこはガマンです。目線の低い被写体を、意味もなく棒立ちで撮るようでは、撮影は絶対にうまくなりません。
この、相手の目線に合わせることの大切さは、「世界ネコ歩き」の写真家・岩合光昭さんを見ているとよくわかります。
動きを予測して撮る
人は常に動いています。その動きをしっかり見るのは撮影の基本ですが、動きを見てからカメラを操作するのでは、カメラワークがワンテンポ遅れてしまいます。
ですから、人物を撮影する場合は、その動きを予測しながらカメラを操作する必要があります。
「動きの予測」には、2段階あると思います。1つ目は、撮影前におこなう全体的な動きの予測です。2つ目は、撮影中におこなう瞬間的な動きの予測です。
全体的な動きの予測とは、事前の脳内シミュレーションといいかえてもいいでしょう。
たとえば運動会やスポーツの場合、子どもや選手の基本的な動きはあらかじめ決まっています。ですので、脳内で撮影をシミュレーションしておけば実際の撮影でとても役立ちます。撮影前に余裕があれば、現場で「カメラリハーサル」をおこなうと、なおいいでしょう。
瞬間的な動きの予測は、撮影経験を積まないと難しいかもしれません。予測自体は誰もがおこなっていることですが、それとカメラワークを連動させるのは慣れが必要だと思います。
いずれにしろ、予測の精度を上げるには、事前の情報収集が不可欠です。予行練習やリハーサルなどに参加するのがいちばんですが、それが無理でも、開催要項を読み込んだりWebで関連情報を検索しておくだけでも役に立つと思います。
表情を撮る
動画でも写真でも、人物を撮るとき最も大事なのは「表情」です。
表情は顔に表れます。ですから、記録撮影では顔が写せるポジションを確保するのが何よりも大事です。しかしそれは、撮影でもっとも難しいことでもあります。
よい機材はお金があれば買えますし、それを使いこなす知識はネットで得ることができますが、撮影現場でのポジション取りは公式化できません。
楽によいポジションが得られることもあります。でも、幸運はそう多くありません。そんなときは、交渉力・コミュニケーション力・空気を読む力・鈍感力など、あらゆる能力を総動員してポジション確保を目指します。それでもダメなら諦める他ありません。
もちろん表情は顔以外にも表れます。後ろ姿が何かを語るということはよくあります。しかし、通常の撮影でそれをカメラに収めるのは非常に困難です。
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